ヒモノオンナができるまで〜10年の恋愛怨念雨模様・ミラノ風味完結編〜
ヒモノオンナのHANAHANAです。
【前回までのあらすじ】
10年の歴史に、決着をつけよう。
まるで西部劇かなんかのようですが、恋愛話最終章です。
当時の自分の心はまさに、ウェスタンハット被って荒野に佇むチャールズ・ブロンソンの如くでした。
さて、期限の午前0時となりました。
ワタシは目を見開いて携帯が動く瞬間を今か今かと待ちます。
カチ、カチ、と時を刻む音だけが鳴り響く室内。
窓の外はいつの間にか雨が降り出しておりました。
雰囲気はバッチリです。そんな気遣いはいらなかったけど。
…それにしても電話来ないな。
10分、20分…と時間は過ぎていきます。
念のためもう一度確認。ワタシ、オトコに本日0時に電話して答えを聞かせろって言ったよね?
メールの履歴は間違いなく期限は今日の0時。今。
…え?あれ?どういうこと?
ワタシ、結構命がけでこの場に待機してるんだけど?
今すでに貧血起こしてぶっ倒れそうなんだけど?
ついでに今日ワタシ誕生日なんだけど、それについても何もないの?
携帯握りしめたままその場でのたうつワタシ。
時間だけが無情に過ぎていく。
気がつけばときはすでに午前3時になろうとしていました。
着信音であるロッキーのテーマが爆音で鳴り響きました。
弾かれたように通話ボタンを押すワタシ。
相手は待ち望んでいたオトコ。「ゴメン遅れて」と謝罪する声の背景がやたら賑やかなのは気のせいか。
遅れてレベルじゃねーぞ!!今何時だと思ってるんだ!!と叫びたい言葉をぐっと飲み込み、
ぜんぜん大丈夫じゃないけど「大丈夫」と言いました。精一杯の虚勢でした。
その時、オトコの背後でご注文はお決まりですか、という声が聞こえました。
ー…間違いねえ、こいつファミレスにいやがる。
この段階でワタシの中のブロンソンは銃連射状態でしたが、しかしぐっと飲み込んで耐えます。
ねえオトコ、ワタシ0時から今後の人生について大事な話をしようって言ってたよね?
できるだけ怒りを表に出さないように慎重に、ゆっくりと語りかけると、オトコは蚊の泣くような声で再びゴメンと詫びてきました。
なんか言い訳をモゴモゴしてたけどもはやそれらは耳に入っておりませんでした。
そんで、どうするの。オトコの決意を聞かせて。
ついに本題に切り込んだワタシ。
絶句の後押し黙る電話向こうのオトコ。
そのときおまたせしました~ミラノドリアでございます、という声が飛び込んできました。
ああそう、現在地は某イタリアンレストランなのね、そうだねオイシイよねミラノドリア。
でも今この大事な瞬間に食べなきゃいけないものだったかなあ。
ワタシの価値はミラノドリア480円以下か!!
とブチ切れていたものの、ワタシは唇噛んで耐えました。
その間もオトコは黙ったまま。せめてなんか言えよ。
さすがに激怒が有頂天となったワタシは、声を荒げました。
ワタシと結婚する気があるのか、ないのかはっきりしてよ!
それとも「親友」と浮気でもしてるって言うの?
そもそも「親友」って何者だよ!自分のカノジョより優先するほど大事なのその人が!?
ここんとこずっと溜め込んでた怒りと疑念が爆発し、深夜だと言うのに馬鹿でかい声で怒鳴りつけました。
ワタシより、その人のほうが好きなの!?
と。もはや気分は昼ドラの修羅場。
オトコはしばらく黙った後、ぽつりと言いました。
…どっちかなんて、選べない…選べないんだよ…
思わず息が止まったワタシ。
同時に、やはり親友とは浮気相手だったのか!この野郎!と怒りが湧き上がります。
二股の怒りをぶつけてやろうと携帯を握りしめた次の瞬間、
オトコは衝撃的なことを叫びました。
「お、オレはどちらも好きなんだ!HANAHANAも、そして、…○○夫のことも!!どちらかなんて選べない…っ」
へ?
今、聞き間違えかと思ったのですが、
たしかに君、○○夫って言ったわよね?
あれっ親友って…浮気って…アレ?
えっ、相手、男の人…なの?
突然の展開に、ワタシの思考は完全フリーズ。
その間もオトコは電話口でワタシと○○夫をいかに愛してるかを語る語る。
ときおり咀嚼音を立てながら怒涛のように語る。(ドリア食ってんなよお前)
一通り演説し終え、満足したのかオトコは大きくため息を付きました。
そして言いました。
オレの愛がどれだけのものかわかったか?と。
わかんねーよバカ、ドリアでも食ってろ!!!
そう叫びつつ携帯を叩き切ったワタシ。
電源もオフにして枕の下にぶち込みそのまま布団かぶりました。
まさか男の人と二股かけられてたなんて思いもしなかった…。
「親友」に浮気されていたのは事実だったけれども!
自分は特に同性愛について嫌悪感とか持ってはないけれど、それでも結婚を一応約束してた相手のその事実は衝撃すぎて10年分の恋愛感情が全部吹っ飛んでいってしまった。
ええ、ひとかけらもなく。
その後、嫁入り道具としてまとめてあった数々の服やら化粧品やらはそのままゴミの日送りにされました。
その中にきっとワタシの女子力も梱包されていたのでしょう。
ついでにゴミ出したその足で居酒屋に乗り込み浴びるほどに飲んだくれてきましたよ。
それからしばらくの間ワタシは完全に無気力となり、ただでさえ出不精引きこもりな生活が輪をかけてひどくなり。そして。
もう恋愛なんてしない。
ワタシは仕事と酒と飯に生きてやる。
そう決心を固め、ここに立派なヒモノオンナが誕生したのでした。
そもそもヒモノオンナってどこから定義なんだろうと思って調べたんですけど、
- メールの返事が極端に遅い、短い
- 簡単な食事なら台所で立って食べる
- 忘れ物を靴を履いたまま、膝立ちで部屋に上がり取りに行く
- 休日はノーメイクでノーブラ
- 半年ほど美容室に行っていない
- 冬場は、毛の処理を怠る、又はしない
- 1人で居酒屋に入れる
- 最近ドキドキしていない
ってwikiにあったのですが、まあこの辺は余裕でクリアしちゃってるのは当然としてもう一つ、
過去の恋愛で立ち直れないから余計にヒモノになるんじゃないかなあって思うのです。
あんな思いするくらいならヒモノでいい!みたいな。
本当は切ないヒモノ事情なのかもしれません。
恋愛なんぞ面倒くさい、といいつつも、どこかもう一度ヒモノから脱却できるような恋を待ってるオンナが、ヒモノオンナの本質なのかもしれませんね。
とかいいつつ手酌で日本酒煽ってる現在、ワタシにその予兆はひとかけらも見当たらないのが物悲しいところです。
HANAHANAでした。